「このわたって自分で作れるの?」「なまこの内臓、捨てるのはもったいないけど使い方がわからない」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?
このわたは、なまこの腸を塩漬けにした珍味。ウニ・からすみと並ぶ「日本三大珍味」のひとつであり、古くから酒飲みを唸らせてきた至極の一品です。
お店で買うと少量で数千円することも珍しくない高級珍味ですが、実は材料はなまこの内臓と塩だけ。手順さえ知っていれば、自宅のキッチンで作ることができます。
この記事では、瀬戸内海の島で水産業を営む私たちが、このわたの作り方を初めての方にもわかりやすく、下処理から熟成・保存方法まで丁寧にお伝えします。
※ 本記事は食品としてのなまこの内臓の調理法をご紹介するものです。特定の疾病に対する効果・効能を述べるものではありません。
このわたとは?日本三大珍味に数えられる理由
まず、「このわた」とは何かを簡単にご説明します。
このわたは、なまこの腸(はらわた)を塩で漬け込んだ塩辛のこと。漢字では「海鼠腸」と書きます。「このわた」という名前は、「こ(なまこ)」の「わた(腸)」がそのまま由来です。
JAPANESE DELICACY
日本三大珍味
このわた(なまこの内臓)・ウニ・からすみ
ウニやからすみと肩を並べる日本三大珍味のひとつ。その歴史は古く、江戸時代には将軍家への献上品として珍重されていたと伝えられています。
このわたの味わい——「海の旨味」の凝縮
このわたの味を一言で表すなら、「海の旨味を極限まで凝縮した塩辛」。
とろりとした舌ざわり、ほのかな苦味の奥から広がる濃厚な潮の旨味。少量を舌の上にのせてゆっくり溶かすように味わうと、日本酒が何杯でも進んでしまう危険な美味しさです。
このわたの特徴まとめ
- 見た目 — 琥珀色〜茶褐色のとろりとしたペースト状
- 香り — 潮の香りと独特の発酵香
- 味わい — 塩気の中に深い旨味、ほのかな苦味がアクセント
- 食感 — とろりと舌に絡みつく、なめらかな口あたり
このわたの作り方|材料と道具
このわた作りに必要なものは、驚くほどシンプルです。
材料
| 材料 | 分量の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| なまこの腸(はらわた) | なまこ5〜10匹分 | 新鮮なもの。卵巣(くちこ用)は別に取り分ける |
| 塩 | 腸の重量の20〜30% | 天然塩がおすすめ。精製塩より風味がまろやか |
たった2つ。特別な調味料や添加物は一切不要です。だからこそ、なまこの鮮度と塩の品質がそのまま味に直結します。
INGREDIENTS
たった2つ
なまこの腸+塩。シンプルだからこそ鮮度が命
道具
- まな板・包丁 — なまこを開いて内臓を取り出す
- ボウル — 腸を洗う・塩をまぶす
- 竹ざる or ザル — 水気を切る
- 清潔なガラス瓶 — 熟成・保存用。金属容器は塩で腐食するのでNG
- キッチンペーパー — 水分を拭き取る
- 箸またはピンセット — 腸の中の砂や汚れを丁寧に取り除く
このわたの作り方|手順を5ステップで解説
それでは、このわたの作り方を順を追ってご説明します。初めての方でも失敗しにくいよう、各ステップのコツも添えました。
Step 1:なまこの内臓を取り出す
なまこの両端(口と肛門)を切り落とし、縦に切れ目を入れて開きます。内側にあるオレンジ色〜茶色の細い管状のものが腸です。これを丁寧に引き抜きます。
コツ:卵巣と腸を分ける
内臓の中に白〜黄色い房状のものがあれば、それは卵巣(くちこの原料)です。このわたには使わないので、別に取り分けておきましょう。卵巣は干して「干しくちこ」にすると、また別の珍味になります。
Step 2:腸の中身を洗い流す
取り出した腸には、なまこが食べた砂や海藻が残っています。腸の端を持ち、箸でしごくようにして中身を押し出します。
その後、塩水(海水程度の濃度=約3%)で丁寧に洗います。真水で洗うと旨味が流れ出てしまうので、必ず塩水を使うのがポイントです。
砂が残ると食べたときにジャリッとしてしまうので、この工程がいちばん大切。2〜3回繰り返して、しっかり砂を落としてください。
Step 3:水気を切り、塩をまぶす
洗った腸をザルにあげ、キッチンペーパーで丁寧に水気を拭き取ります。余分な水分が残ると雑菌が繁殖しやすくなるので、しっかりと。
水気を切ったら、腸の重量を量り、その20〜30%の塩をまぶします。
塩の量の目安
腸100gに対して塩20〜30g。多めにすると保存性が上がり、少なめだと味がまろやかに。初めてなら25%程度がバランスの良いスタートラインです。塩が少なすぎると傷みやすくなるので、20%を下回らないようにしましょう。
Step 4:ガラス瓶に入れて熟成させる
塩をまぶした腸を清潔なガラス瓶に入れ、冷蔵庫で7〜10日間熟成させます。
熟成中は1日1回、清潔な箸でかき混ぜるのがポイント。これにより塩が均一に行き渡り、発酵が均等に進みます。
AGING
7〜10日
冷蔵庫でじっくり熟成。毎日1回かき混ぜるのがコツ
3日目あたりから、腸が徐々にとろりと溶けはじめ、独特の発酵香が出てきます。7日目以降、全体がペースト状になったら完成の目安です。
Step 5:味見をして完成!
7日目を過ぎたら、少量を味見してみましょう。塩味がなじんで、とろりとした旨味が感じられたら完成です。
まだ塩角(しおかど)が立つようなら、もう2〜3日熟成を続けてください。塩味がまろやかに変わり、旨味が深まっていきます。
このわた作りの失敗しないコツと注意点
このわた作りはシンプルですが、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
| ポイント | 理由 |
|---|---|
| なまこは必ず新鮮なものを | 鮮度が落ちた内臓は臭みの原因に。当日〜翌日加工が理想 |
| 砂抜きは徹底的に | 砂が残ると食感を大きく損なう。3回以上洗うのが安心 |
| 洗いは塩水で | 真水だと旨味が流出する。海水程度(約3%)の塩水を使う |
| 塩は20%以上を厳守 | 塩分が低すぎると傷みやすい。保存性と味のバランスは20〜30% |
| 容器はガラス瓶を使用 | 金属は塩で腐食する。プラスチックは匂い移りの可能性あり |
| 毎日1回かき混ぜる | 塩と発酵を均一にし、表面の乾燥やカビを防ぐ |
保存方法と賞味期限の目安
- 冷蔵保存 — 完成後2〜3週間が食べ頃。1ヶ月以内にお召し上がりください
- 冷凍保存 — 小分けにしてラップで包み、冷凍庫へ。1〜2ヶ月保存可能
- 異変を感じたら — 異臭や変色(緑・黒)が出たら食べないでください
このわたの美味しい食べ方3選|至福の晩酌タイムに
できあがったこのわた、どうやって食べるのがいちばん美味しいのか。珍味の旨味を最大限に引き出す食べ方を3つご紹介します。
① そのまま少量を舌の上で(日本酒との至福)
いちばんのおすすめは、小さじ半分ほどを舌の上にのせて、ゆっくり溶かすように味わう食べ方。このわたの濃厚な旨味が口いっぱいに広がったところに、冷やした純米大吟醸をひと口。
これが、酒飲みが「最高の贅沢」と呼ぶ瞬間です。
② 炊きたてご飯にひとのせ
炊きたての白ご飯に、このわたを少量のせるだけ。塩辛の塩気とご飯の甘みが絶妙に調和して、「もう一杯」が止まらない危険な美味しさです。わさびを少し添えるとさらに風味がアップ。
③ クリームチーズ × このわた(意外な名コンビ)
クリームチーズの上にこのわたを少量のせる——これが意外なほど合うのです。チーズのまろやかさがこのわたの塩気をやわらげ、ワインにもぴったりの洋風おつまみに。
クラッカーにのせれば、ホームパーティーの話題の一品にもなります。
島の漁師の食べ方
瀬戸内の漁師たちは、できたてのこのわたを大根おろしに和えて食べることも。大根の辛味がこのわたの旨味を引き立て、さっぱりといただけます。地元では「このわたおろし」と呼ばれる通の食べ方です。
まとめ|日本三大珍味を自宅のキッチンで
このわたの作り方をあらためて整理します。
- 材料はたった2つ — なまこの腸と塩だけ。特別な道具も不要
- 砂抜きがいちばん大切 — 塩水で丁寧に洗い、3回以上繰り返す
- 塩は腸の重量の20〜30% — 少なすぎると傷みやすいので注意
- 冷蔵庫で7〜10日熟成 — 毎日1回かき混ぜて、全体がとろりとしたら完成
- 食べ方はシンプルに — そのまま日本酒と、ご飯にのせて、クリームチーズと
お店で買えば少量で数千円するこのわたが、自宅で作れる。しかも、できたての味わいは格別です。
瀬戸内海の穏やかな海が育てたなまこから生まれる、日本三大珍味のひとつ。今シーズンのなまこが手に入ったら、ぜひ一度、挑戦してみてください。
瀬戸内の海が育てた、本物のなまこを。
なまこ商品を見てみるよくある質問
Q. なまこ何匹分でこのわたはどのくらいできますか?
なまこの大きさにもよりますが、5匹で大さじ1〜2杯程度が目安です。腸はとても細いので、まとまった量を作るには10匹以上が必要になります。少量でも十分に楽しめるので、まずは少量から試してみてください。
Q. 赤なまこと青なまこ、このわたに向いているのは?
一般的には赤なまこのほうが身が厚く内臓も大きいため、このわた作りには赤なまこが向いているとされています。ただし、青なまこでも十分美味しいこのわたが作れます。手に入りやすいほうでお試しください。
Q. このわた作りに適した時期はいつですか?
なまこの旬は晩秋〜冬(11月〜3月頃)。この時期のなまこは身が締まり、内臓も充実しています。特に年末年始に向けて仕込む方が多く、お正月にできたてのこのわたを楽しむのは産地ならではの贅沢です。
免責事項
本記事は食品としてのなまこの内臓の調理法をご紹介するものであり、特定の疾病の治療・予防・改善を目的とするものではありません。自家製の塩辛は保存状態により品質が変化します。異臭や変色が見られた場合はお召し上がりにならないでください。衛生管理にはご注意のうえ、自己責任でお作りください。