夏の味覚として知られるハモ。実は、食卓のおいしさだけでなく、海の生態系を考えるうえでも目が離せない魚です。
ハモをおいしく味わうことは、海の恵みを未来へつなぐこと。
資源を守りながら、必要な分だけを利用する。その大切さを、ハモの生態からひもときます。
この記事の要点
- ハモは夜に活動し、魚・エビ・カニ・イカ・タコなどを食べる大型の肉食魚です。
- 愛媛県の豊後水道北部周辺では、2019〜2023年の資源動向が「増加」と評価されています。
- 大切なのは、獲り尽くすことでも放置することでもなく、資源を守りながら適切に利用することです。
ハモはどんな魚?
ハモは日本では福島県以南の沿岸に広く分布し、水深100メートルほどまでの砂地や泥底に生息しています。昼間は海底の巣穴に身を潜め、夜になると巣穴から出て餌を探します。
春から夏にかけて沿岸で産卵し、ウナギやアナゴと同じような葉っぱ型の幼生になって、海を漂いながら成長します。大きなものでは全長2メートル前後にもなり、魚類だけでなく、エビやカニ、イカ、タコなども捕食します。

愛媛の海で見られるハモの増加
近年、ハモは海域によって漁獲が増えています。水産研究・教育機構などの2024年度の資源評価では、愛媛県の豊後水道北部周辺で、2019年から2023年にかけての漁獲量の推移が「増加」と判断されています。2023年の同地域の漁獲量は161トンでした。
知っておきたいこと:ハモの漁獲量は全国どこでも一様に増えているわけではありません。海域によっては減少している場所もあり、資源の状態は地域ごとに異なります。
だからこそ、増えている今も「いくらでも獲ってよい」と考えるのではなく、海の変化を見ながら適切に利用することが大切です。
なぜ「適切に獲る」ことが大切なのか
ハモは、魚や甲殻類などを食べる大型の捕食者です。特定の海域でハモが増え、餌となる生き物が少なくなってくると、ほかの魚との餌の競争が強くなったり、一部の生物に捕食の影響が集中したりする可能性があります。
大阪湾では、ハモが増えた時期にアナゴの減少が重なり、ハモがアナゴを捕食していたことが報告されています。海の変化は水温、餌の量、漁業、海底環境など、さまざまな要因が重なって起こるため、「ハモだけが原因」とは言えません。それでも、大型の肉食魚が増えたときの捕食圧を見守ることは、海のバランスを考えるうえで欠かせません。
獲り尽くさないための取り組み
自然を守るために必要なのは、ハモを根絶することでも、無制限に獲ることでもありません。
- 小さなハモを逃がし、次の世代につなぐ
- 産卵を担う大きな親魚を守る
- 産卵期に休漁し、資源の回復を待つ
- 傷つきにくい漁具を使い、放流後の生存率を高める
徳島県や大分県などでは、小型魚の再放流や産卵期の休漁といった資源保護の取り組みが行われています。これは海の恵みを一度きりで終わらせず、将来も利用し続けるための知恵です。

海の恵みを、おいしく未来へ
ハモを食べることは、単なる消費ではありません。地域で獲れたハモを地域で味わうことは、漁業者の収入となり、漁業を続ける力になります。漁師が海の状態を見ながら漁を続けることは、海の変化を見守る人を残すことにもつながります。
獲り尽くさず、獲らなさすぎず。
小さな魚や親魚を守り、海の状況に合わせて漁を調整する。
それが、ハモと海の自然をこれからも守るための、持続可能な付き合い方です。
湯引き、天ぷら、蒲焼き、鍋など、ハモはさまざまな料理で楽しめます。ご家庭では、骨切り済みで揚げるだけの瀬戸内産ハモフライもぜひお楽しみください。